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ラトルズのビートルズをパロディ化した映画の上映


ビートルズをパロディー化したテレビ映画『ザ・ラトルズ:オール・ユー・ニード−・イズ・キャッシュ』がロサンジェルスで開催されているウイリアム・S・ペーリー・テレビ・フェスティバル(William S. Paley Terevision Festival)で、2月28日から3月13日まで上映されている。
CBSラジオ・テレビのネットワークを開発したペーリーにちなんで名前がつけられたこのイベントでは、スターやライター、撮影クルー、そして役員たちまで、過去と現在のショーに関わった人たちに会い、質問をするチャンスを観客やファンに提供し、また芸術的、文化的そして歴史的に価値のある作品に、敬意を表すというもの。
この作品は、もともとモンティー・パイソンのコメディアンにより書かれ、エリック・アイドル(Eric Idle)が共同ディレクターを務め、ビートルズへの愛がこめられたパロディーで彼自身も演じている。
音楽家のニール・イネス、リッキー・ファター、ジョン・ホールジーらも演じている。このフィルムには、‘I Must Be In Love(アイ・マスト・ビー・イン・ラブ)’、‘Tragical History Tour(トラジカル・ヒストリー・ツアー)’、‘Cheese and Onion(チーズ・アンド・オニオン)’など、きみが悪いほどビートルズの曲に聞こえる迷曲が収められている。

アイドル、イネス、そして、グレー・ウェイズ(彼もまたこのフィルムに出演している)は、このフェスティバルに出演予定で、メイン・プレゼンテーションの後に、観客からの質問に答える。



ラトルズ(THE RUTLES)とは?
ビートルズを徹底的にパロディ化したテレビ映画“ALL YOU NEED IS CASH”の主人公グループ「ラトルズ」は、イギリス人のユーモア感覚が生み出した最高級の産物と言っても過言ではないだろう。イギリスの傑作テレビ・コメディ・シリーズ「モンティ・パイソン」のスタッフ、キャストが生み出したこのバンドは、誕生から25年経った今でも伝説として語り継がれている。
そもそもは1976年10月、モンティ・パイソンの中核だったエリック・アイドルが持っていたBBCのテレビ番組「ラトランド・ウィークエンド」内で、ビートルズをまねたグループ「ラトルズ」が、ビートルズ・ソングにそっくりな‘IMust Be InLove’なる曲を演奏したのがきっかけだった。作曲及び演奏に関わったのは、ビートルズのテレビ映画“MAGICALMYSTERY TOUR”にも出演したボンゾ・ドッグ・(ドゥー・ダー・)バンドにいたニール・イネス。
この映像はアメリカの人気テレビ番組「サタデイ・ナイト・ライブ」でも放送され、好評を博した。そこでイネスとアイドルは、ラトルズをビートルズのパロディ・グループとして本格的に描くテレビ映画の企画に着手した。
この作品は、1978年3月に“ALL YOU NEED IS CASH”としてBBCで(アメリカではNBCで)放映された。ハンブルク時代、デビューから屋上ライブ、解散までのビートルズの表の歴史を完璧にパロディ化するのみならず、実に細かいところまで凝りに凝って映像を再現した大傑作である。例えばラトルズがゴーカートに乗っている短いカットがあるが、これは当時はマニアのみぞ知る存在だった、初期ビートルズを撮影したプライベートな8ミリカラー・フィルムのパロディだ。この一例を取ってもわかるように、観る側がビートルズに詳しければ詳しいほど、その面白さが深まるようになっているのだ。しかも内容は「モンティ・パイソン」の流れをくむイギリス人特有の皮肉がたっぷりと含まれながらも、それ以上にビートルズへの敬愛が感じられ、まったくいやみがない。
そしてゲスト陣も豪華そのもの。番組内で独占インタビューに応じている「ラトルズの歴史の証言者」は、なんと本物のミック・ジャガーとポール・サイモンであり、劇中でラトルズが経営する「ラトル・コープス」(アップルのパロディ)が財政的ピンチを迎えていることを伝えるテレビ・レポーター役を演じたのは、驚くなかれジョージ・ハリスン本人である。そのほかに、名コンビのジョン・ベルーシとダン・エイクロイドなども出演している。
アイドルはこの作品で脚本・監督のほか、ダーク・マックィックリー(ポール)役、また全編を通じてのレポーター役を演じた。イネスはサウンドトラックとして使用される曲を書き、ロン・ナスティ(ジョン)役で出演。ほかの2人はスティッグ・オハラ(ジョージ)役のリッキー・ファターとバリー・ウォム(リンゴ)役のジョン・ホールジーが担当。アイドルを除いて全員が本職の腕利きミュージシャンだったので、そのまま演奏も行っている(アイドルのパートはオリー・ハルソール、アンディ・ブラウン、ジョン・アルトマンらがプレイした)。
イネスが書いた曲も当然すべてビートルズ・ソングの巧妙なパロディで、思わず笑ってしまいつつもじっくり聴き込める作品揃い。‘Ouch!’(‘Help!’)や‘Love Life’(‘All You Need Is Love’)‘Get Up And Go’(‘Get Back’)など、ほぼすべての曲で元ネタがはっきり特定でき、演奏の完成度もすばらしい。ことにイネスの声、歌い方はジョンにそっくりで、‘CheeseAndOnions’は一部ファンの間で「ジョンの未発表曲」と噂になったこともあるほどだ。当時、このサウンドトラックから14曲を収録したアルバム“THE RUTLES”が発売されている。ジャケットもビートルズのアルバムをパロディにしたものを4枚並べたもので、話題を呼んだ。のちに6曲が追加収録されたCDがリリースされている。
これだけでもラトルズはじゅうぶん伝説となるに値するが、実はまだ続きがあった。ビートルズの未発表音源の集大成“ANTHOLOGY”シリーズ、そして新曲‘FreeAs A Bird’‘Real Love’が発表されて一大ムーブメントを巻き起こしていた1996年、“笑撃”の「ラトルズ再結成!」のニュースが駆けめぐったのである。そして実際に「未発表音源集」の名目で“ARCHAEOLOGY(考古学)”なるアルバムまでリリースされてしまったのだ。これも全作曲はニール・イネス、演奏はラトルズに参加した「正式」メンバー。ここまで完璧に貫かれたパロディ精神には、もはや脱帽するほかはない。
今年7月には、長らく廃盤になっていたビデオがDVDとして再発売される予定である。ビートルズが不滅のグループであるように、ラトルズもまた永久に不滅なのだ。 (文責:B'net)


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