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ドングリといっしょに平和を育てよう、オノ・ヨーコが「ドングリ・イベント」に出席。33年ぶりジョン・レノン・ミュージアムで復活


6月17日(日)、梅雨の晴れ間の一日、埼玉県さいたま市のジョン・レノン・ミュージアムで「ドングリ・イベント」の式典が開催された。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコは、1966年の11月9日、ロンドンの画廊で初めて出会って以来、お互いにひかれあうようになり、パートナーとなってからは、音楽活動とともに平和イベントを展開、白い袋の中に入ってパフォーマンスを行なう「バッグ・イン」や、ハネムーンのベッドの中で平和を語る「ベッド・イン」などで「ラブ・アンド・ピース」を訴え、世間の注目を集めた。
「ドングリ・イベント」は、そんなジョンとヨーコが試みた初めての平和イベント。今から33年前の1968年6月15日、ふたりはイギリスの全国彫刻展覧会参加作品として、コベントリー大聖堂の庭に「平和の象徴である2粒のドングリを東と西の2箇所に植え、育った樹木から種子が生まれ、その種子がまた芽生えるという生命活動の循環」そのものを作品としたアートを発表。それは翌年、世界各国の大統領や首相に向けて「ドングリを植えていっしょに平和を育てましょう」と呼びかけ、ドングリの入った「愛の小包」を送るという「ドングリ・キャンペーン」につながっていった。
式典では、ステージ左手にはヨーコさんのアート作品「Ex It」を思わせる大きな白いプランターが設置され、さわやかな緑色の苗木が2本、からみあいながら、すくっと伸び上がるように植えられていた。
時間になり、ヨーコさんが登場。この日のヨーコさんは黒い半袖シャツ姿。左側の襟元には、この日から抽選で来館者に配られるヨーコさん発案の「メッセンジャー・オブ・ピース」の水色のバッジが光っている。菊池館長のあいさつのあと、ヨーコさんが微笑みながら「こんにちは」とあいさつすると、ゲストとして招かれた黎明幼稚園の生徒たちも元気にあいさつを返していた。
あいさつのなかでヨーコさんは、ジョンとヨーコの平和活動をふりかえりながら、「世界を変えたりするのには時間がかかる」けれど、「忍耐強く、毎日水をやって、愛を込めて成長させてあげてください。私たちもいっしょにいますから」と呼びかけ、「夢の力を持っていっしょにやっていきましょう」と結んだ。
その後、報道関係者との質議応答に入った。「日本の若いミュージシャンやアーティストも地球環境に向けてのイベントをやっていくべきだと思うか」との問いには、「受け入れ体制はもうできていると思う。勇気を持ってどんどん主張していただきたい」と答えた。
また、アルバムのニュー・リリースの予定についての質問には『ミルク・アンド・ハニー』のリマスター盤が進行中で、すごくいいボーナス・トラックが見つかったから、喜んでいただけると思うと語った。またジョンのどういうところにいちばん感激したかという質問に対しては、みずからの作品の展覧会で「ジョンとヨーコ」を快く思わない周囲から冷たくされたエピソードを挙げ、「こうやっていじめられているときには、かえって知らんぷりをして、影響されないようにきちんとしているべきなんだよ」とジョンから諭され、ふたりで座るところもないので階段に座っていた、という思い出を紹介した。
なぜドングリを選んだかという問いには、イギリスではドングリが大事にされていること、自分が「どんぐりころころ」の童謡で育ったことなど、イギリスと日本の共通点を挙げた。
「行ってみたい国や地域」はあるかという問いには、「直感で体が教えてくれる方向に行くのが正しいのではないかと思う」と答え、アメリカの平和コーポの活動(今回ヨーコさんが発案したバッジに刻まれた言葉「メッセンジャー・オブ・ピース」の概念とも共通する)について紹介し、世界へ出て行くこともたいせつだが、日本ではまず「自分の体を改良していくことがたいせつ」と語った。
続いて今回のイベントの趣旨に賛同した3団体へのドングリの苗木と記念のパネルの贈呈式が行なわれた。
川越市立山田中学校教諭、矢島利哉さんと教え子の中学生ふたり、黎明幼稚園園長、鈴木奉一氏と園児たち、アイリスケアセンター大宮桜木町利用者代表、神原和子さんに、それぞれヨーコさんからドングリの苗木およびジョンとヨーコが1968年にドングリを植えている様子を撮った写真パネルが手渡された。幼稚園児たちからヨーコさんへは花束が贈られた。身をかがめ、優しい表情で小さな手から花束を受け取り、みんないっしょに写真におさまることができるよう気を配るヨーコさんの姿が印象的だった。ヨーコさんと握手した神原さんが感激した様子で涙ぐむ一幕も見られた。
その後3団体を代表し、矢島利哉さんがあいさつ。「こんなに緊張したのは教員採用試験以来」と打ち明けながらも、ユーモアたっぷりに今回のイベントのきっかけについて語り、「全校に草の根的な活動を続け、物というよりも精神を継承していきたいと思う」と結んだ。満場の拍手のなかヨーコさんの退場とともに式典は終了した。


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