新着ニュース


ポール・マッカートニー・インタビュー、ノーカット版!(全文掲載)


『ジョン・レノン・カレイドスコープ』で6月21日に放送された ポール・マッカートニーのインタビューを完全版で紹介します。一部、時間の関係でカットされたものも掲載しました!

聞き手:斉藤早苗

斉藤(以下SS): ハロー、ポール。
ポール(以下PM ): ハロー、斉藤さん。

PM: カレイドスコープをお聴きの日本のみなさん、こんにちは。

SS: 今“WINGSPAN”のプロモーションでお忙しそうですが、“WINGSPAN”発売のタイミングについては以前お話されてましたよね。『THE BEATLES1』の成功に続くとは偶然ですが、その前から計画されていたのですか?『1』の制作には何年もかかったようですが。今がそのとき、と決められた理由は何でしょう?

PM: うん。今発売する理由は、ただそれだけ時間が必要だったからだよ。僕らは約3年半前から始めたんだけど、もともとリンダとメアリーの夫アリステアのアイデアだったんだ。ホーム・ムービーをたくさん使ったサプライズ・ビデオを僕らの結婚記念日のために用意してくれてね。彼は映画製作者だから、それに音楽も入れてきれいに編集してくれたんだ。子どもたちが音楽や何かとともに成長していくのを観て、とても感動したよ。僕らの結婚生活のいい歴史に思えた。だからリンダと僕は、アリステアに「いっしょに“WINGSPAN”をやらないか?」って言ったんだ。僕ら家族についてなにかやろうよって。始まりは偶然みたいなものだね。彼は「うん、やりたい」って言ってくれて、時間をかけて古い資料を研究したり探したり、インターネットでファンに「だれか(いい映像を)持ってないか」って聞いたりしたんだ。僕らのドラマーだったデニー・シーウェルが古いホーム・ムービーを持っていたりね。だから、すべての素材を探すのにすごく時間がかかった。その後、アリステアはずっと編集を続けてて、やっと終わったんだよ。

SS: と言うことは、アルバムは映画のあとに出来たのですか? それとも映画と同時に?
 
PM: アルバムについては、映画が完成しつつあるときに僕が「こんなに良いものを観たら、このサウンド・トラック・アルバムが欲しくなると思うな」って言ったんだ。僕は音楽が良かった映画のサントラ盤をよく買うんだよ。だから、この映画にとってのバーチャル・サウンド・トラック的なものを出せたらいいなと思ったんだ。それで、なにがこの映画にふさわしいかを考え始めた。そしてアリステアとは別に、僕がウイングスのお気に入りの曲をまとめていったんだ。ミリオンセラーになったものもたくさんあって、それは1枚目に収められてるよ。ヒット曲が聴きたい人のためにね。それから2枚目は僕が重要な作品だと思う曲、外せない曲を集めたんだ。と言うことで、2枚組になったんだよ。でも価格は1枚分なんだ。

SS: 選ぶのは大変だったでしょうね。たくさんの作品がありますから。ライブ・トラックはありませんが、なにか理由があるのですか? 選択基準は何だったのでしょう?

PM:  確かにないね。スタジオでレコーディングされたものがメインなんだ。なぜなら、一般に人がなにかを思い出したり、記憶を呼び起こしたりするには、その記憶に忠実なほうがいいと思って。よく「‘With A Little Luck’が出たころ、アメリカを旅行中だったんだ」みたいなことを言われるんだ。その曲を聴いたときに自分がどこにいたかを覚えてるんだよね。「ああそう、そうだよ! 思い出したよ!」って。だから、みんなが聴いていたスタジオ録音版を使ったほうが、より記憶を呼び覚ませると思ったんだ。そして1、2曲、ファンのためにちょっとした特別なものを入れて、違いをつけてみたんだ。ラジオで流れただけで当時発売されなかったものなんかをね。だからちょっとおもしろいものも入ってるよ。ライブも少しだけあるんだ。映画では僕が‘Bip Bop’と‘Hey Diddle’をリンダと子どもと庭で歌ってるものなんだけど。子どもが踊りながら歌っているのが聴こえるよ。それが唯一のライブ・トラックかな。

SS: では基本的にスタジオ収録のものなんですね。今、日本では新しい世代のファンが増えてきてるんですよ。『1』がいろんな世代でヒットしたんです。10代のファンはウイングスをどう思うでしょうか? あるいは、どう思ってほしいですか?

PM: ウイングスの良いところは、僕の友人が言うところの「正統な」曲だということだね。最近は、スタジオでグルーヴィな音作りをして (「グルーヴ」音をまねる)、それから「これになにを足そうか?」って話すんだ(「メロディ」音をまねる)。そのやり方は僕らとは逆なんだよ。僕らは曲を書いて、それから ― (「グルーヴ」音をまねる) ― そしてもっとこう ― (「ファンキー」音をまねる) 。とにかく、強い曲だと思う。実際、発売当時よく売れて人気があったってことは、その構成に強さがあったから人を惹きつけられたってことだ。ラブソングは今でも人の心を惹きつけるよね。だっていつの時代も人は恋に落ちるから ― 世界のどこでもね。神様に感謝しなきゃ。

SS: ウイングスと言えばリンダさんですよね。バンドのメンバーとしての彼女の重要性を教えて下さい。

PM: リンダは僕にとってとても重要だった。僕にとって最も重要だったんだ。僕は同じバンドに友人、本当の友だち、ソウルメイトが必要だと感じていた。そういう意味で、リンダは完璧だった。彼女は最初は演奏ができなかったけど、練習するにつれて初歩的な未熟なレベルから、かなり洗練されていった。そのころには、1976年のアメリカで‘Live And Let Die’のキーボードのパートを演奏してたんだよ。キーボード奏者なら、あの演奏が難しいことはわかるはずだ。だから、彼女はとても上達したんだ。映画“WINGSPAN”やそのレコードでは ― でも特に映画のほうだね ― リンダがどうしてバンドにいたのかがわかると思うよ。バンドの精神的な面において、彼女がどれだけ重要だったか。ツアーで、彼女がどれだけ強い精神力を持った重要な存在だったか。観客がリンダを愛してしたこともね。リンダはチアリーダーみたいな存在だったんだ。「彼女のハーモニーはちょっとずれてるね」なんて言われたりもしたけど、それは彼女の声のせいだと思う(「コーラス」音をまねる)。リンダはファンをリードしていて、そんななかでハーモニーをとらえるのはすごく難しいんだよ。彼女はすごかった。リンダのハーモニーはすばらしくて、僕らの声とうまくブレンドしたんだ。エルトン・ジョンにも誉められたんだよ。マイケル・ジャクソンは、僕らが共作したときに彼女にハーモニーを入れてもらおうって強く言ったんだ。リンダは無から始めて、とてもうまくなった。彼女はロック・バンドの一員となった最初の女性のひとりだって言われるんだけど、Annie Lennox(アニー・レノックス)やトンプソン・ツインズのAlana(アラナ)や、他のたくさんの人たちも、彼女が自分たちに自信をくれたって言ってるよ。彼女たちを見ればわかるんだ。「わあ、すごい」ってね。リンダはお手本みたいなものだったんだ。初期のガールズ・パワーだね。

SS: リンダはソウルメイトなんですよね。あなた自身の音楽的なキャリアにおいて、彼女はどれくらい重要だったのでしょうか? あなたを後押しするような存在として。

PM: うーん、ビートルズ解散後、僕は大変だったんだ。そのことでひどく落ち込んでしまってね。僕にとっては、日曜日には世界最高の音楽の仕事をやっていたのに、月曜日には無職になっちゃったようなもんだ。だから本当に大変だったけど、リンダのおかげで立ち直れたんだ。彼女は「あなたならできる、問題ないわ、続けられるわ、あなたは今も立派なソングライターよ」みたいなことを言ってくれたんだ。彼女のおかげで自身が持てたし、彼女が音楽的に上達してからは音楽的にも協力し合ってたし、僕と共作したこともあるよ。

SS: ジョンは1980年に亡くなる前、あなたとまた曲作りをしたいと言ってますね。もしジョンがまだ生きていたら、彼となにがしたいですか?

PM: ジョンと? ジョンとなら何でもできるよ。僕らが組めばすごいことになるだろう。何てったって僕らはすばらしいんだから。ジョンとの共作はすごいことなんだ。ジョンは言うまでもなく僕にとって最高の共同制作者なんだ。それ以外のだれかを考えるなんて、ばかげてるよ。だって彼はほんとにすごい奴だし、僕らのコンビもほんとにすごいんだから。彼の作品にとって僕は重要なはずだし、僕らには僕らのやり方があったんだ。最近思ったんだけど、僕らがいつもだいたい3時間ぐらいかけていた作曲のセッションでは、一度も曲が書けなかったことがないんだ。これはどえらいことだよ。考えてもごらんよ、僕らは約295曲いっしょに作ったと思うけど、一度も不作だったことがないんだ。僕らが座れば、曲が生まれた。‘Drive My Car’は大変だったんだけどね ("Beep beep, beep beep, yeah!"と歌う)。僕があの曲を彼に聞かせたときは‘Golden Rings’っていうタイトルで、そんなによくなかったんだ ("I can bring you Golden Rings / I can bring you anything / 'Cause baby I love you'"と歌う)。チューンはある、アイデアの核心は。でもこの‘Golden Rings’にはまいったよ (進行がうまくいかないという音をたてる)。もうイヤになって、「ちょっと休もう。お茶しようよ」って言ったんだ。そしてお茶して、また再開して、運転手を欲しがってるLAの女の子っていうばかげたアイデアを思いついたんだ。"You can drive my car"って言う女の子を。そしてもっとユーモラスな展開を作って、いい曲に仕上げたんだよ。ちょっとしたクールな曲だろ。だけどそれが唯一あぶなかった曲だな。それって並外れたことだよ。で、僕らが今なにをしていたかって? まだ曲を書いていただろうね。もっといい曲をね。

SS:  ありがとうございます。そろそろ時間がなくなってきたようです。ニュー・アルバムはどのようなものになりますか?

PM:  ニューアルバムは新曲ばかりだよ。ポップ・アルバムと言えるかな。スタジオ録音で、僕がここ数年に書いた曲と今年の新曲が入ってる。とってもエキサイトしてるよ。6週間くらい前にLAで始めて、あと2週間ほどで終わるかな。だから1か月だね。とても早い、早いよ。プロデューサーもミュージシャンも初めて組む人たちなんだ。9月に発売予定だよ。まだタイトルは決めてないけど、9月にはわかるよ。

SS:  どうもありがとうございました。あなたがまた来日されるのか、日本のファンになにか言葉をいただけますか?

PM: そうだね、いつか行きたいね。アルバムが完成したら、ツアーのことはいつも考える。それでライブをしたいと感じたら、それで決まりだ。だから9月か、たぶんその前にアルバムが出来てたら、ライブをするかどうか決めたいな。そうなるといいね。そしたら日本に行って、すてきな人たちに会えるね。僕が日本で逮捕されたからって、みんなは罪を感じなくていいんだよ。

SS: そのことを聞こうと思ってたんです(笑)。

PM: だれかが僕にそう言ったんだ。日本の人たちが僕が逮捕されたことに罪の意識を感じてるって。でも、逮捕されたのは僕なんだからって言ったんだ。僕が罪を犯したんだよ。でも僕はもう何とも思ってない。あれは僕が悪いんだから、そのことでみんなをいやな気持ちにさせたくないんだ。ずいぶん前のことだし。でもそう、日本にまた行けたらいいね。そして、新曲や昔の曲をプレイしてね。“WINGSPAN”、“WINGSPAN”さん*。

SS: ウイングスパンさ〜ん?ものには「さん」をつけないんですよ〜。
どうもありがとうございました。リスナーの方のおみやげにサインをください。抽選でプレゼントしたいんです。

PM: OK! これにサインすればいいの? もちろん。(CDにサインをしながら)“WINGSPAN”さん。ウイングスパン・ワールドだよ。すてきなペン、すてきなペンさん。(口笛)

*編注)日本人の姓には「さん」をつけて呼ぶんですよ、と話したら、なぜかポールは何にでも「さん」をつけて呼ぶようになってしまいました。(笑)


[新着ニュース一覧にもどる]