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ジョン・レノン映画『THE KILLING OF JOHN LENNON』論評


ジョン・レノンを暗殺したマーク・チャップマン初の伝記映画『THE KILLING OF JOHN LENNON』が、8月中旬にスコットランド首都で2週間にわたり開催されたエジンバラ国際映画祭でついにベールを脱いだ。
監督はアンドリュー・ピディントン。ベテランのテレビ・ディレクターであるピディントンは、ジョン暗殺を題材にした映画を作ることは、世間からあまり歓迎されないことをわかっていた。
「ジョン・レノン暗殺は今でも多くの感情をわき起こすデリケートな題材。暗殺者の視点でこのテーマを描くことは、多くの反論を呼ぶと思う。しかし、安易な方法はとりたくなかった。私はリアリズムが人々を狼狽させるのを知っているが、真実を伝える責任があると思ったのです」
オノ・ヨーコは「チャップマンについてのドキュメンタリーや映画、たとえば『CHAPTER 27』(ジャレット・シェーファー監督のチャップマンを描くふたつめの映画、2007年予定)のような作品は、つらい記憶をよみがえらせてしまう」と語った。
ピディントンは、『CHAPTER 27』とは真実性においてまったく異なる作品だと語る。「チャップマンの精神病を、間違って描きたくなかった。彼に責任能力がないと言ったり、同情を示したりすることは決してしていない」
警察の証言、インタビュー、日誌、精神科医の記録をもとに脚本が作られ、暗殺者を演じるジョナス・ボールの冷たい声がナレーションする。
ピディントンはニューヨークのジャンクショップをくまなく探し、チャップマンの濃いサングラス、ハワイアン・シャツ、そしてチャップマンが暗殺時にしっかり抱えていた『ライ麦畑でつかまえて』の本を見つけた。
ロケ地も正確だ。少人数の低予算映画のクルーはジョージア州ダコタへ行った。チャップマンがコロンビア・ハイスクールに通っていた場所だ。また彼が暗殺に使ったCharter Arms .38リボルバーを購入したハワイにも行った。
しかしピディングがもっともぞっとすると語る場面はラスト・シーンである。チャップマンが第2級殺人罪を宣告され、ニューヨークの北、バッファロー近くに送検される場面である。
ハンマーのたたかれる音とともに、冷たく残忍なチャップマンの「最もビッグな有名人を殺した最もビッグな無名人」としてのプライドがあばかれる。
最も心を動かされるのは、この殺人はいかにランダムに行なわれたかという検証だろう。チャップマンは、精神科医との面接で、ジョン・レノンは彼の殺人者リストの大勢のなかのひとりだったと認めた。
ピディントン:「この映画で探求するのは3つの悲劇。ジョン・レノンの悲劇と、彼が生きていたらできたであろうことを見ることができない事実。そして精神科医の助けが必要だったにかかわらず、当時それを得られなかった25歳の男の悲劇。そして起きてしまったことを受け入れなければならなかった彼の家族。私にとっては、みじめさとしかいいようがないのです」


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